「銀行口座付き会社」の売買はなぜ犯罪なのか——犯収法とマネロン
会社売却にともなう法人口座の売買は、犯罪収益移転防止法に触れる犯罪です。なぜ違法なのか、すでに売ってしまった場合に口座凍結や刑事責任がどうなるのか、資金繰りに困っている場合の他の道、そして「休眠会社を買えば口座を引き継げる」が正しくない理由まで解説します。
会社売却で「法人口座」を売買するのは犯罪?
はい。銀行口座付き会社の売買は、犯罪収益移転防止法に触れる危険な取引です。預貯金口座の譲渡・提供はそれ自体が犯罪で、会社ごと売買する形をとっても、口座の利用が目的なら潜脱として摘発対象になります。口座は特殊詐欺やマネーロンダリングに悪用されるため、売り手・買い手のいずれも処罰の対象になり得ます。まっとうな会社売却とは全く別物です。当窓口はこうした取引を一切扱いません。
「口座付き会社、売ります」という広告の正体
インターネット上には「銀行口座付きの休眠会社、売ります・買います」といった広告が存在します。一見すると普通の会社売買のように見えますが、その実態は「使える銀行口座」を受け渡すことに主眼があります。これは、まっとうな事業承継とはまったく異なる、危険な取引です。
なぜ犯罪なのか——犯罪収益移転防止法
預貯金通帳やキャッシュカード、口座そのものを譲り渡す・譲り受ける・提供することは、犯罪収益移転防止法(第28条)で禁止されており、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象です。業として(反復継続して)行った場合は、3年以下の懲役または500万円以下の罰金と重くなります。
「会社ごと譲渡するから合法」という理屈は通用しません。会社の株式譲渡の形をとっても、その実態が口座の受け渡しを目的とするものであれば、潜脱行為として同様に問題となります。
もう売ってしまった場合、どうなるのか
すでに口座や会社を譲り渡してしまった方が、いちばん知りたいところだと思います。起きることは、大きく3つです。
- 口座が凍結されます。譲り渡した口座が犯罪に使われると、警察等からの要請により、本人の知らないうちに口座が凍結されます。
- その金融機関だけの話では終わりません。振り込め詐欺救済法にもとづき、犯罪利用の疑いがある口座の情報は他の金融機関にも提供されます。名義人の情報が共有され、数年間、どの金融機関でも新しい口座を開けなくなることがあります。
- 刑事責任を問われることがあります。犯罪収益移転防止法違反のほか、他人に譲り渡す意図を隠して口座を開設していた場合は、金融機関に対する詐欺罪に問われる可能性があります。詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑で、犯収法違反より格段に重いものです。
「口座を売ると二度と口座が作れなくなる」と言われるのは、この情報共有の仕組みがあるためです。期間は事案や金融機関の判断によって異なり、一律に何年と決まっているものではありません。
もし心当たりがある場合は、放置せず早い段階で弁護士や警察にご相談ください。被害の拡大を止め、事情を説明することが、結果として自身を守ることにつながります。当窓口では刑事事件のご相談はお受けできませんので、この点は専門家をお訪ねください。
資金繰りに困って売ろうとしている方へ
「休眠会社を口座ごと買い取る」という話が持ちかけられるのは、多くの場合、資金繰りに行き詰まっているタイミングです。数十万円のために応じてしまい、刑事責任と口座凍結を抱えることになれば、事業の再起はかえって遠のきます。
会社に許認可・取引先・技術者・設備が残っているなら、それは口座よりはるかに価値のある資産です。まっとうな第三者承継として売却できる可能性があります。廃業を選ぶ場合でも、廃業と会社売却の実額比較をご覧いただくと、手元に残る額が変わることがあります。
「休眠会社を買えば口座を引き継げる」は正しくない
ネット上には「休眠会社を買えば、会社名義の既存の銀行口座をそのまま使える」と書かれた情報があります。これは、実務としても法律としても、当てにできる話ではありません。
- 金融機関は、代表者の変更・株主の異動があれば取引時確認をやり直します。実態のない法人や、事業内容の説明がつかない法人は、口座の解約・取引停止の対象になります。
- 警察庁は2025年9月にも、法人口座の不正利用防止に向けた対策強化を打ち出しています。法人名義であれば緩い、という時代ではありません。
- そもそも口座の利用を目的とした会社の売買は、株式譲渡の形をとっても潜脱として問題になります。
「口座が付いてくること」を売り文句にしている取引は、それ自体が危険信号だとお考えください。
買い手はなぜ「口座」を欲しがるのか
まっとうな事業目的で法人口座が必要なら、自分で会社を作って銀行の審査を受ければよいはずです。それをせず「口座付きの会社」を買おうとするのは、多くの場合、自分の名義では銀行審査を通せない資金移動——特殊詐欺の受け皿、闇金、無登録の送金、マネーロンダリングなど——を目的としています。つまり、この市場の買い手需要は、本質的に犯罪の需要と地続きです。
売り手も「幇助」で罪に問われる
「使っていない休眠会社を売るだけ」と軽く考えるのは危険です。売却した会社の口座が犯罪に使われれば、売り手も詐欺の幇助や犯罪収益移転防止法違反に問われ得ます。安易な譲渡が、自分を加害者側に立たせてしまうのです。「知らなかった」では済まされないケースもあります。
まっとうな会社売却とは、まったく別物
正規の会社売却(事業承継M&A)は、現に事業を営む会社を、その許認可・取引先・従業員ごと次の経営者へ引き継ぐものです。口座はあくまで事業に付随するものであり、口座それ自体を目的にはしません。
当窓口は、建設・運送・産廃・派遣などの現業の事業承継だけを扱い、銀行口座付き会社・宗教法人・節税目的の会社売買など、不適切な取引は一切扱いません。少しでも不安のある取引を持ちかけられたら、応じる前に専門家や警察・消費生活センター等にご相談ください。
出典・一次情報
- e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)
- e-Gov法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(振り込め詐欺救済法・平成19年法律第133号)
- 警察庁「法人口座及びインターネットバンキングの利用を含む預貯金口座の不正利用等防止に向けた対策の一層の強化について」(2025年9月)
- 警察庁 JAFIC(犯罪収益移転防止対策室)
この記事のよくある質問
会社売却のときに法人口座を売るのは違法ですか?
違法です。預貯金通帳・キャッシュカード・口座そのものを譲り渡す、譲り受ける、提供する行為は犯罪収益移転防止法(第28条)で禁止されており、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、業として反復継続して行った場合は3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金の対象です。会社ごと株式譲渡する形をとっても、実態が口座の受け渡しを目的とするものであれば潜脱として同様に問題になります。
口座を売ってしまいました。どうなりますか?
譲り渡した口座が犯罪に使われると、警察等からの要請により本人の知らないうちに口座が凍結されます。振り込め詐欺救済法にもとづき、犯罪利用の疑いがある口座の情報は他の金融機関にも提供されるため、数年間どの金融機関でも新規の口座開設ができなくなることがあります。さらに、他人に譲り渡す意図を隠して口座を開設していた場合は、金融機関に対する詐欺罪(10年以下の拘禁刑)に問われる可能性があります。心当たりがある場合は放置せず、早い段階で弁護士や警察にご相談ください。
口座を売ると二度と口座が作れなくなるというのは本当ですか?何年ですか?
犯罪利用の疑いがある口座の名義人情報は金融機関の間で共有されるため、新規の口座開設が長期間できなくなることがあります。ただし期間は事案の内容や各金融機関の判断によって異なり、法律で一律に何年と定められているものではありません。
休眠会社を買えば、その会社の銀行口座をそのまま使えますか?
当てにできません。金融機関は代表者の変更や株主の異動があれば取引時確認をやり直し、実態のない法人や事業内容の説明がつかない法人は口座の解約・取引停止の対象になります。警察庁も2025年9月に法人口座の不正利用防止に向けた対策強化を打ち出しています。そもそも口座の利用を目的とした会社の売買は、株式譲渡の形をとっても潜脱として問題になります。
資金繰りに困っています。会社を売る以外に方法はありませんか?
許認可・取引先・技術者・設備が残っているなら、それは口座よりはるかに価値のある資産で、まっとうな第三者承継として売却できる可能性があります。数十万円のために口座を譲り渡し、刑事責任と口座凍結を抱えると、事業の再起はかえって遠のきます。当窓口では、承継の可否と概算の価格を無料でお出ししています。
まずは「うちの会社、いくらで売れる?」を無料で。
業種・許認可・売上・後継者の有無をうかがい、承継の可否と概算価格、事業承継・M&A補助金の対象可否まで無料でお出しします。売る・買う・たたむのどれが最適かを中立に整理します。しつこい営業はしません。